2023-03-12から1日間の記事一覧
さて、いよいよ、『嘔吐』中で最もうんざりする、また同時に、最も重厚でみごとな感触に満ちたくだり──美術館の一幕である。 「土曜日の朝」 パニックの翌日、ロカンタンは再びカフェ・マブリに行って朝食をとり、ファスケル氏はひどい流感で寝込んでいただ…
行きつけの店のマスターが部屋で死んでいるというイメージにとりつかれたロカンタンは滑稽である。そのあげく、彼はパニックに襲われたのだという。 いつものように図書館に行っても不安は消えず、またカフェ・マブリに戻ってみるが、入っていくのさえやっと…
またしても金曜日である。ロカンタンはカフェ・マブリに行く。行きつけで、きびきびと動き廻るマスター、ファスケル氏の一種いかがわしい雰囲気がむしろほっとさせる店なのだという。 《私は独りきりの生活をしている。完全に独りだ。だれともけっして話をす…
若者ロカンタンは、さらに俗物の大人、ロジェ氏の観察を続けるのだ。 《ロジェ医師はカルヴァドスを飲んだ。その大きな身体が屈みこみ、瞼が重たげに垂れる。私は初めて目のない彼の顔を見た。まるで今日あちこちの店で売っているボール紙のお面のようだ。彼…