2024-01-01から1年間の記事一覧
映画は暴力的な装置となりうるメディアである。 暗闇の中で強烈な光を放つ映像と増幅された音響、大スクリーンに拡がるイメージと心を揺さぶる楽曲、それらが有無を言わせぬ持続として観客の耳目になだれ込むのである。そこで人々は自ら囚われの身となり、何…
学生食堂にはA定、B定とあり、つねにB定(食)と決めていた。時に廉価設定ゆえのレバかつとなり、つゆ知らずにかぶりついたとたんに滲み出る不味さ、落胆は忘れられない。が、これぞ修行、と飲み込んだものである。食い物によって左右などされまいぞ、との気持…
正月早々の大地震で大変なことになっているが、『細雪』にも昭和13年の阪神大水害が書かれている。激しい水流に飲み込まれそうになったり、水没する部屋からかろうじて脱出する様などが如実に描かれているのだ。戦争や災害以外にも、病気や流産があり、若者…
さて次は、谷崎潤一郎の『細雪』を読んでみよう。 『細雪』は、『雪国』とほぼ同時期の昭和11年から16年頃の日本の中上流の家族を描いている。昭和18年からの雑誌掲載は軍部の圧力で中止となるが、発表のあてなく書き継がれて戦後に刊行、評判となった小説で…