岩波文庫もあてになりませんね。20年以上前の『人間失格』には、「痛苦」を「苦痛」とした痛恨の誤植がありました。自浄力を見ようと知らせてありませんが、どうなっていることやら。
私の印象では、近代は新潮文庫がましのようです。誤植防止、本文校訂、漢字使用等で。
近代文学出版の重要拠点で、近代文学大系、さらに明治文学全集という金字塔を打ち立てたはずの筑摩書房は、会社更生法以降信頼度減じ、ちくま文庫版の「梶井基次郎全集』などにも致命的なミスがありました。
私は愛書家では全くありませんが、まだまだ使い勝手悪く、メモもし難いKindleと比して、書込み自在、頁を破り綴じてアンソロジーも作れる文庫本は有益で、講座テキストにも重宝故(売上優先の文字拡大重版による頁数変更には悩まされつつ)、校閲校正部よ奮起を、と念じています。
誰とでも交流するには最多流布本の新潮文庫と思い使っていますが、講談社文芸文庫、さらに光文社文庫の勢いに押され気味かもしれませんね。翻訳力の比較評価は別として。
が、やはり反愛書家としては、全てノッペリとしたエディター文字で、アクセス自在のデジタルテクストの横組み本文を、極軽量、折り畳み、書込み自由のペラペラのKindleあるいはハンカチのように拡がるスマホで読みたい、と願っています。
文学や思想といった幻想に浸るも醒めるも自由に、他からの、本の佇まいによる権威付けなど払拭するために。今も最も優れた新潮社装丁部(彼らは装幀室と呼んでいます)の美本に惑わされぬためにも。
ーーFB畏友の岩波文庫に誤植発見の報を受けて。
