hosoyaalonsoの日記

文学懐疑のダンカイ世代

笑顔の人

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その人は、院の教え子だが私より年長の団塊世代
東京の一流企業を早期退職して地元に戻り、向学心に燃えて大学へ。他分野を学んで院へ進学、みごと博士号まで取得。今も文化センターの資料室に通って勉学続行中という。
聞けば地元の旧家の出で独身。丸の内の社員時代から様々な知己を得、有名企業経営者とも仲良くなり銀座へも同行。現在も知友多く、何と他県人会の会長と親しくなって特別会員とされ、正月には杵つきの餅が届くのだという。
健康の秘訣は、と聞くと、毎日家や庭の掃除をして、身なりを整え市の中心部へでかけることです、と至って謙虚。十数錠の薬を飲んでいるそうだが、「若い頃から元気なんです」と明るい答え。大学病院の各科の医者とも懇意になって診てもらっているから大丈夫だという。
そんな話を始終笑顔で続け、「私はほんとうに良いみなさんと出会って幸せだと思っています。先生にも大変よくして頂きました」としみじみ語る。
「すばらしいのは周囲よりも、むしろあなたの方でしょう」と言いたくなるのを抑えて、その若々しい顔をながめていると、絶やさぬ笑顔の中に、ういういしい感受性が光っている。傷つきやすいほどに繊細なそれが。
「どうぞ分かってください」と言うかのように。
一瞬、眼前に永遠の少年を見た思いがしたのである。