一 二様の声 『仮面の告白』(一九四九昭24・7、河出書房)の中には二様の声が響いている。それは〈まだわからなかつた〉という声と、〈理解しはじめてゐた〉という声である。では、何が〈わからなかつた〉というのか? ――むろん〈異常性〉が、すなわち自分…
〈おわり〉は〈はじまり〉を知るが、〈はじまり〉は〈おわり〉を知らない。〈はじまり〉は〈おわり〉の出現によってつねに凌駕されるが、〈おわり〉にとって〈はじまり〉はなお不可欠の淵源である。〈はじまり〉の悪遺伝をかこつ者も、〈おわり〉の蛇尾に歯…
引用をストックしました
引用するにはまずログインしてください
引用をストックできませんでした。再度お試しください
限定公開記事のため引用できません。