hosoyaalonsoの日記

文学懐疑のダンカイ世代

共同幻想

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かつて、吉本隆明の造語「共同幻想」は、いかにもあやうい概念でありながら(我々はそうと知っていたのだ)、「上部構造」の身動きできぬほどの重苦しさや、「社会通念」の息苦しい俗塵にまみれた馴れ合いを、「観念」でさえなく、「幻想」と名指す暴言によって蹴散らし、まるで神主の祓い棒の様な威力をもって、若い我々の脳中に旋風を起こしたのだ。

爾来50年、上部構造のシステムの強靭を嫌というほど身をもって知り、社会通念の執拗な牽引に溜息の出るほど絡め取られてきた我らダンカイは、いまやこうして、小金と小康に自足したかの如き老人面を、日々温温と晒しているのである。

生き残りの我ら、哀れむべき上部通念にして共同観念、長年月「社会」という確固かつ可変、自明かつ不可解極まる、大いなる幻影を営々とかたちづくってきたエレメントの片々よ、向後何処へ。